第22回 講師:坂田亮一さん(6期生)食肉の利用技術の発展 =過去から今日まで=

日 時 2月18日(火) 19時~ 
テーマ 食肉の利用技術の発展 =過去から今日まで=
講 師 坂田亮一(6期生) 麻布大学名誉教授 農学博士

<概要>
 城西中学校から城南高校へ、その後は宮崎大学農学部に進学され、九州大学大学院農学研究科を経て公務員となり、麻布大学で38年間教壇に立たれた後に、同大名誉教授となられた。

 在職中は、ドイツ連邦食肉研究所に留学され、日本畜産学会賞や日本養豚学会賞、内閣府食育推進ボランティア団体表彰等を受賞されたほか、現在でもDLGドイツ農業協会ハム・ソーセージ国際審査員を担われ、国際的な食肉加工の安全性の確保に寄与されている。
 また、2021年10月29日にNHK放送「チコちゃんに叱られる!」では「ソーセージとウィンナーの違い」について番組を監修し、ご本人も出演された(日本食肉科学会理事長)。
 今回はこのような講師の職歴と研究成果からの講義となった。

 人類誕生から現代人に至るまでのヒトの進化の歴史には「脳」の進化が重要なポイントで、この脳の進化には「火」と「肉食」、つまり火を使って肉を食い、食肉を乾燥させて保存するなど、ヒトが生命維持のために食肉保存技術を進化させたことが深く関わっているという。
 食肉は非常に腐りやすい。それを防ぐには微生物の発育を阻止するのみでは不十分で、その新陳代謝機能を弱め、生化学的反応(熟成・腐敗)を抑制することが必要である。その方法としては、①冷蔵と凍結(冷凍)、②塩蔵(えんぞう)、③燻煙、④乾燥、⑤加熱、などがある。
 例えばスペイン産のハムは色も鮮やかでみずみずしいが、②塩蔵と➃乾燥、つまり塩漬けして食肉の水分と微生物の脱水をして保存性を高める技法が使われている。15~16世紀の大航海時代のヨーロッパでは、同じ技法で食肉保存された塩蔵豚肉が重宝されたという。
 また③燻煙は、樹脂を多く含まない木材(薪、鋸くず、チップ等)を不完全燃焼させ、発生する煙中の多くの腐敗物質を食肉の表面に付着あるいは浸透させて微生物の繁殖を抑制する技法で、②塩蔵などの塩漬けの技法と組み合わせて行われる。

 そのほか、多くの食肉保存の技法や食肉文化の歴史等について解説されたが、驚くことは、現代の食肉保存技法の基礎は人類の祖先が既に確立していた、ということである。

 冒頭の、チコちゃんに叱られる!「ソーセージとウィンナーの違い」は「ウィンナーはソーセージである」が答えであった。つまり、ウィンナーは数あるソーセージの種類の中にあるもので、ソーセージとは 豚や牛の挽き肉を食塩や香辛料で味付けして動物の腸などの容器に詰めて加熱または乾燥させたものであり、我が国では、ウィンナーは「羊の腸」を使ったもの、または人工皮で直径20mm未満、に該当するものを言う。ウィンナー(Wiener)は「ウイーン風の」という意味で、元々はオーストラリアのウィーンで良く食べられていたから、とのことである。
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