福岡県立城南高校同窓会/校章・名称使用 認証番号 №00002

第36回 講師:原山擁平さん(24期生)AIの進化で”消滅”の危機を迎えるオールドメディア 〜なぜ新聞・雑誌は「Netflix」になれないのか〜

日 時 2026年6月16日(火)19時~
テーマ AIの進化で”消滅”の危機を迎えるオールドメディア 〜なぜ新聞・雑誌は「Netflix」になれないのか〜
講 師 原山 擁平さん(24期生) 株式会社新潮社 デイリー新潮編集部(フリーライター)

<概要>
講師は城南高校卒業後、1997年に株式会社新潮社に入社。写真週刊誌『FOCUS(フォーカス)』の記者を振り出しに、その 後『読売新聞』などを経て、長年にわたりメディアの最前線で活躍された。

今回は、現場の修羅場をくぐり抜けながら培われた講師のメディア観をもとに、急速に進むデジタルシフトや生成AIの荒波の中で、新聞や雑誌といった伝統的な「オールドメディア」が直面している存続の危機と、情報ビジネスの未来像を深掘りした講義となった。

冒頭、講師自身のユーモアあふれる自己紹介を交えつつ、新入社員時代に初めて経験した尾行取材に触れた。尾行相手の動きに振り回されて右往左往する講師に「遮蔽物を活用しろ。戦場と同じだ!」と鬼カメラマンに怒鳴られ、日曜の公園なのにスーツとネクタイ姿、木の幹を遮蔽物として活用すると周囲の来園者に怪しまれたというエピソードを披露。何よりも特ダネが優先された“メディアのアナログ時代”を振り返った。

続いて、紙の雑誌とネットメディアにおけるビジネスモデルの構造的な違いが解説された。講師は、かつての週刊誌はスクープ記事だけでなく人気作家の連載小説やエッセイなど魅力的な読み物を詰め込んだ「幕の内弁当」であり、出せば飛ぶように売れる高い利益率を誇るビジネスであったと強調。その中核となる売上構造が、現代のネット配信(Yahoo!ニュースなど)によって一本ずつの「記事のバラ売り」に変貌したことで、極端な薄利多売のビジネスを余儀なくされている実態が語られた。

1,000万PV(PageViewの略称。日本語では閲覧数)を超える大反響を得ても、メディア側の手元に残る利益はごくわずかであり、その歪な構造からSNSの反応をただまとめるだけの「こたつ記事」が粗製乱造される怪現象が多発している現状が具体的に示された。

ネット世論とネットメディアの関係を巡っては、世間の関心が高いニュースが優先されることに焦点が当てられた。ネット世論の沸騰を受けて反射的な「こたつ記事」を配信するのではなく、識者や専門家に丁寧な取材を行って「反・こたつ記事」を作成しても、それが必ずしもPVに結びつくわけではない状況が説明された。

その一方で、ネット世論が沸騰していた刑事事件の裁判における検察の求刑を巡る記事では、元検察官ら法曹家たちの本気の怒りを報じると、多くの反響を呼んだという。

また、ネットでは難しい記事が読まれないという側面が現実としてあり、ネットメディアが持つ究極的な欠陥を意識することの大切さが説かれた。

さらに現在の大問題として、Googleでニュースに関する検索を行うと、AI(Google Gemini)が全国紙、民放キー局、大手ネットメディアのニュースを勝手に要約して表示してしまうため、ユーザーがメディアの公式サイトに来なくなり、コンテンツの対価(お金)が全く入らなくなるという深刻な構造崩壊が始まったと解説された。

これに対する今の有効な対抗策は、無料配信から有料配信(サブスクリプション)に切り替えるしかなく、成功を収めて世界的に注目されている『ニューヨーク・タイムズ』の事例や、国内出版社が新たに始めたサブスクリプションの仕組みが紹介された。

ただし、サブスクリプションの成功例は極めて少ない。多くの消費者は「Netflix」には金を払っても、大手新聞社の月額会員は伸び悩んでいる。講義の締めくくりでは、「大手新聞社や出版社の有料化は苦戦しているというが、日経電子版は成功しているのでは?」との質問が飛び出した。

これに講師は「日経のように“ビジネスパーソンにとって必須の自己投資”としてのイメージを確立したメディアは強い。一方、全国紙が配信する政治部の記事や社会部の記事といった公共性の高いはずのニュースにお金を払う人は非常に少ない。『マスコミュニケーション』という原義の通り、読者が必要とするニュースを大量に安価に届けるというビジネスモデルは終焉を迎えつつある可能性が存在し、それこそ講師と受講者の距離が極めて近いオンラインサロンには出費を惜しまないという価値観のシフトが生じつつある」という見解が示された。

講義中、緊急地震速報が鳴り響く緊迫した一幕もあったが、その後の懇親会でも世代を超えた活発な意見交換が行われ、メディアの裏側への学びをさらに深め、明日からの情報との向き合い方へと変革させる、大変実り多く温かい一夜となった。